絶対音感を身に付けるメリット

音楽の基本となるメリット

音を聞いただけで正確な音名・音高が分かる絶対音感には、音楽の基本となるメリットがたくさんあります。一番実感しやすいのは、歌が上手になることです。

子供の頃から歌を歌う場面は多くありますから、上手に歌えることは自信にもつながります。どの音とどの音を重ねるときれいに聞こえるかという感覚にも優れているため、主旋律だけでなくハモリが得意になる傾向が見られます。友人同士でカラオケに行くときに、人気者になれる可能性があります。もちろん、本格的な歌手を目指すときにも絶対音感は強い味方になってくれます。

また、絶対音感があることで一度聴いた音楽を忘れにくくなったり、頭の中で曲を作れたりといった能力も身につきやすくなります。これらの能力は、音大受験の際に有利に働きます。将来、音大に進みたいと考えている人は持っていると非常に強い武器になるでしょう。

お子さんに音楽の道に進んでもらいたいという希望があれば、幼少の頃から絶対音感を身につけられるようなトレーニングをしておくのがおすすめです。最終的にお子さんが音楽以外の道を選んだとしても、トレーニングによって得たものは人生の幅を広げます。

そして、他の人より音楽が得意になる可能性も高く、音楽を楽しみやすくなることもメリットです。音楽に限らず言えることですが、楽しみは人生を豊かにしてくれます。音楽を楽しむために絶対音感が必ずしも必要というわけではありませんが、身につけていればより深い部分まで音楽を理解したり感じたりできるようになります。

楽器を演奏する際のメリット

絶対音感を持っていることは、楽器を演奏する際にもたくさんのメリットがあります。音を聴いて音名・音高を直ちに把握できると曲を素早く正確に認識して記憶することが可能になるため、曲を再現する能力が高い傾向にあります。聴いた音から直接的に曲をすぐに再現できてしまう人もいるほどです。

楽譜がない状態での演奏にも比較的早く対応可能なことに加えて、楽譜を読んで曲をイメージできたり、初見の楽譜で演奏することが得意になったりします。子供のうちに絶対音感を身につけるとともに、楽譜を読むトレーニングをすることで、将来楽器を演奏するときに有利になるでしょう。

絶対音感があれば、楽器のチューニングが手早くできます。チューニングには通常音叉やチューナーといった道具を使用します。しかし、絶対音感を持つ人の中にはそうした道具なしでもぴったり音を合わせられる人がいます。

確実にぴったりとまではいかなくても、ある程度の範囲までチューニングを合わせた後で道具を使って調整すれば、チューニングの時間を短縮することにもつながります。短縮した時間を演奏の練習に充てられるので、楽器の上達も早くなりやすいです。

さらに、オーケストラのような大人数の演奏でも音のずれに気が付けることがメリットです。ただずれていると違和感を持つだけでなく、どこがどのようにずれているか指摘することができるようになれば、各パートのリーダーや指揮者として活動できます。

より繊細な感覚を身につければ、今の演奏をもっと良くするためにどの楽器がどのように演奏を変化させれば良いかということを指摘できるようにもなります。集団での演奏をリードする立場になるためには有利な能力の一つです。

音楽以外の部分にもメリットがある

絶対音感のメリットとなるのは音楽の面だけではありません。他にも生活に役立つ有利な面があります。

一つ目は、言語の習得スピードが早くなりやすいという点です。言語を習得するためにはもちろん単語の暗記や文法などの情報も必要となりますが、耳で音を聞き、それを再現できることも非常に重要となります。日本語は比較的音階の幅が狭い言語ですが、外国語の中には音階の幅が広い言語もたくさんあります。

通常外国語を習得するときにはその発音の特徴や音域の幅を聞き取ることに慣れる行為から始まりますが、絶対音感を持っている人は微細な音でも聞き分けるのが得意なので、言語の習得が早い傾向にあるのではないかと考えられています。

将来音楽に関わる場合でもそうでなくても、グローバル化する社会で複数の言語を習得できることは有利に働くので、そのような効果を期待して絶対音感のトレーニングをしてみるのも良いでしょう。

また、絶対音感を持っている人は集中力が高い傾向にもあります。これは、子供の頃に音楽のトレーニングを受けることによって脳神経が発達することと関係していると考えられています。勉強やスポーツ、ビジネスなどどんなことをするにしても、集中力があった方が良い成績をおさめやすくなります。

そして集中して物事に取り組めることは、それ自体が自信にもつながります。将来音楽の道に進んでほしいと考えている人でなくても、子供自身が好きになれることを選んでいつか成功してほしいと考えている場合には、幼いうちに絶対音感のトレーニングを受けさせておくのがおすすめです。

当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」

音楽教育のススメ(幻冬舎)