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独学で何かを習得しようとする時、主に必要となるのは費用と時間、そして自分を客観的に分析する力です。クラシックギターを学び始める時も同じく、ギターや教則本などにかかる費用、練習にかける時間、今の練習方法が自分に合っているか、上達につながっているかなどを分析し、常に軌道修正していく力が必要となります。
最初に必要なものは準備にかかる費用です。クラシックギターと参考にするための教則本や動画を手元にそろえるだけなので、かかる費用もこれらの購入代金のみであり、選び方の工夫次第でかなり抑えられます。
独学の大きなメリットは、最小限の費用で始められるということです。楽器店で予算を伝え実際に触らせてもらい、足台やチューナー、手入れの道具などを一緒に購入するのが一般的です。
次に教則本です。書店にも置いてありますが、楽器店の書籍コーナーであれば、お店のおすすめ教則本といった情報を得られる可能性があります。
また、インターネットなら教則本の口コミなどを参考にしたり、実際に動画を検索したりするのも良いでしょう。この準備がスムーズにいけば独学のメリットは大きくなりますが、楽器も教則本も自分に合ったものを選び損ねると、新たな費用や手間が発生します。
レッスンを受けるとなれば、楽器の購入費用は同じくかかります。しかし、自分のレベルや体格に合ったものを的確にアドバイスしてもらえるため、クラシックギターという大きな買い物を失敗する確率はかなり下がります。
教室によっては入会金やレッスン料金、レッスン場所までの交通費などの費用がかかりますが、独自のメソッドを持つスクールも多く、先生との相性も体験レッスンで感じとることができるため、教則本や動画を試行錯誤しながら何度も探す手間や費用が削減できます。
クラシックギターと教則本が用意できれば、後は練習を始めるのみです。通学スタイルは、先生またはスクールを探し、体験や入会の後に開始という流れになりますが、独学はその必要がないためスタートが早くなります。練習場所が自宅なら移動時間はなく、自由に練習時間を設定できることも独学のメリットです。
しかし、時間的な自由はデメリットも生みます。練習のやりすぎとやらなさすぎ、これらはどちらも良い結果につながりません。短期間にやりすぎれば、体の負担になったり、できないことでやる気がそがれたりしかねません。
また、練習を怠り気味になり間隔があきすぎると成果が出にくいので、ある程度の練習時間や頻度を決めておくことは大切です。スクールの場合は時間に制約はありますが、しっかりと練習時間などに時間に区切りをつけられるので、メリハリが生まれます。
独学の場合、調子の良い日はできたことを何度かおさらいして、体になじんだら時間が短くても終了させます。どうしてもうまくいかない日ややる気が起きない日は、ギターを弾くよりも原因を探ったり練習方法を考え直したりことに時間を使うなど、潔く切り替えることがコツです。
費用をかけず、時間を自由に使える独学というスタイルは魅力的ですが、いかに自己管理するかがクラシックギター上達の速度に影響するので、自分に合った楽器、練習方法、時間の使い方を見つけることが大切です。
いざ独学でクラシックギターを練習し始めると、比較的早い段階で本当にできているのかという疑問が生まれます。何かを見ながら実際にやってみて、できたら次の課題へ進んでいくとしても、独学である限りできたかどうかを判断するのは自分です。
動画であればデモ演奏の音を聞くことや、姿勢や弾き方を立体的に見ることはできます。ただ、必要以上の力を入れない、指を軽く反らして、といった表現だけでは、必要以上や軽くがどのような感覚なのかがわかりません。
手の大きさや指の形など、体格や力の強さは人それぞれで、見た目や聞こえてくる音をまねしようとしすぎれば、かえって不自然な動きを生み出し、悪い癖となってしまうこともあります。一般的にではなく、自分の体格に合った適切なアドバイスを教則本や動画で得るのは困難なことです。プロの客観的視点が入らないことは、独学のデメリットの一つです。
試行錯誤を繰り返しながら根気よく独学を続ける人、自分の癖を上手に使って独自の演奏法を生み出して楽しむ人、レッスンを受ける人など、上達の速度は個人差がありどれが正しいとは言えません。
独学は自分で考え回り道をしながらも答えを見つけていく面白さが、レッスンは自分に合った練習方法で効率よく技術を習得している実感が、それぞれのモチベーションになります。どちらが良いかではなく、どちらが自分の性格に向いているかです。
クラシックギターは一人で演奏するスタイルが多いですが、アンサンブルを経験したり、人前で演奏したり、仲間と切磋琢磨したり等で磨ける技術もたくさんあります。独学のメリットは一人で自由にできることですが、一人では経験できないことも多いものです。
まずは始めてみて、そして継続していく中で自分に合ったスタイルを見つけることができれば、クラシックギターという奥の深い楽器を楽しみながら続けることができるでしょう。
当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」