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中級者で求められる奏法の使い分けやアルペジオ、音色のバリエーションといったことが確実にこなせるようになったら、
もうワンランク上のクラシックギターの弾き方に挑戦してもよいでしょう。
上級者の行う練習方法は、これまでに習得した技法や知識を応用して、様々な練習曲を弾きながら学んでいく、
いわば実践的な学習が主体となります。具体的には、複数の弦を左手の人さし指で抑える全セーハの仕方を習得します。
少なくとも5フレットは抑えられるように練習しましょう。セーハは最初のうちは力んでしまいがちで、音が出にくいです。
しかし、慣れてくると無駄な力を入れずに押さえられるようになります。
続いて、音を小刻みに連続して演奏するトレモロや、倍音とよばれるハーモニクスなど、中級者よりももう一段高度な技法を学びます。さらに、アレグレットやアンダンテ、アダージョといった速度の違う演奏について、知識としてその意味を理解しつつ、体験として練習曲を通して体全体で身につけていきます。
具体的には、カルカッシやソルの練習曲をいくつもこなし、技術が向上すればクラシックの名曲にもチャレンジするといった具合です。この段階までくると憧れの名曲を練習に組み込んでもよいでしょう。
お気に入りの曲であれば、練習にも熱が入り、クラシックギターを弾くことがもっと楽しくなっていきます。練習時間は長さではなく、短時間であっても緊張感を持って弾くことが大切ですから、誰かに聴いてもらうというのも効果的な練習方法です。
クラシックギター上級者の練習方法のポイントは、指ごとに音量に変化をつけるなど細かな点に注意を払うことです。
細部にまで神経を行き届かせると、音の美しさ、響きなどに奥行きが出て、心に届く演奏になります。
さらに、左手の弦を抑える動きから無駄をなくすといった点も大切です。
左の動きがなめらかになると、コード進行がスムーズになり、弦を押さえたり離したりする動きによる無駄な音も減るので、美しい演奏に近づきます。
指の動きの練習は、目標をしっかり持って地道に続けること、そして必要に応じてフォームを見直し、基本に立ち返ることも、確実なレベルアップを目指す上で大切です。
上級者ともなれば、音楽理論をもう少し踏み込んで積極的に学ぶようにしましょう。
理論を知ると、以前はよく飲み込めなかったこともより深く理解でき、その意味がストンと腑に落ちるようになります。
さらに、コードや音階の仕組みがわかれば、なぜそうなるのかという原因や因果関係が理解でき、より深い自信につながります。倍音など特殊な演奏技法についても、理論を理解した上で練習を行うことで、ポイントを抑えた効果的な訓練ができるでしょう。
さらにレベルアップすれば、レディメードの音を再現するだけでなく、オリジナルな音作りにも挑戦できるようになります。この段階までくれば、クラシックだけでなく、ジャズやポップスの要素を取り入れて、自分の創造性を発揮することにも挑戦してもよいでしょう。まさに基礎から応用の世界へ羽ばたく段階で、自分のオリジナル曲を作って演奏することも夢ではありません。
クラシックギターの上級者といっても、あらゆる曲がうまく弾けるわけではありません。
どのような曲にも必ず難しい部分があり、そこを乗り越えなければ、満足できる演奏にたどり着けません。
苦手な部分を克服するにはいくつかコツがあります。例えば、難しいと感じた部分をゆっくりと丁寧に弾いてみることも一つの方法です。ゆっくり弾くことで指の動きを確実に体に覚えさせ、繰り返し練習することで徐々にスピードも上がってきます。早弾きにしても、使う指のパターンは曲ごとに違います。
いくつものパターンを体で覚えてしまえば、意識しなくても自然と指が反応するようになります。
苦手の克服は繰り返して練習する以外に近道はありません。頭でわかっていることを体が自然に表してくれるようになるまで、練習を重ねる必要があります。
上級者になると、自分の弱点もよくわかるようになります。一つの曲を最初から最後まで弾くというより、克服したい技法をテーマに、苦手な部分を強化する基礎練習を自分なりに組み立てて行うことが上達につながります。
しかし、苦手部分を無事克服して曲が弾ければ、そこが終着点ということではありません。
上級者は、楽譜通りの演奏に自分のオリジナリティーを加えていく工夫もできるでしょう。
演奏に自分の感情や想像力をプラスして、音色や強弱、スピードに独自性を発揮していくのも演奏の醍醐味です。
演奏にはその時の気持ちが表れるものですが、年齢や環境、演奏する場面などによって感情は変わります。ですから、自分の感情を素直に表せる技術を磨いておくこと、そしてその技術を素直に出せるように常に準備しておくことが、上級者の練習方法ともいえるでしょう。
当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」