お問合わせ03-5357-7374
受付時間9:00-19:00
楽器の練習場所として最も便利なのは自宅ですが、その際は周囲の住民に迷惑をかけないようにしなければなりません。特に集合住宅や密集した住宅街の戸建てで楽器の練習をする場合は、屋外への音漏れに対する配慮が必要です。
環境基本法では、生活環境の保全や人の健康の保護という観点から、騒音に関する基準が定められています。例えば療養施設の近くなど特に静穏が求められる地域では、50デシベル以下といった数値を守る義務があります。
自宅で楽器を使用する際、バイオリンであれば80デシベルから90デシベルの音が出ており、これはパチンコ店で鳴っている音と同じくらいの大きさです。ピアノは90デシベルから110デシベル、ドラムやパーカッションだと130デシベル程度です。
1974年には、隣人のピアノの演奏音を騒音と受けとった男によって、母子が殺害されるという事件も起きました。この事件をきっかけに、日本では住居の騒音対策が進み、一部のピアノに弱音装置の取り付けが行われるようになりました。
建物自体に防音工事ができないマンションなどでは、ポータブルの防音室を利用するという手があります。ポータブルの防音室は1畳から2畳程度の広さのコンテナ風ボックスです。完全な防音はできなくともかなりの音量を低減できるため、周囲への迷惑を抑制できます。
レンタルサービスを行っている業者もあり、必要な期間のみの利用も可能です。アルトサクソホンやバイオリンなどは、消音器という装置を楽器につけることで音漏れを低減することができます。ただ防音室と同様、完全に音漏れを防げるわけではないため、周囲への配慮は必要です。
意外に利便性が高いのがカラオケボックス店やマイカーです。地方自治体が施行している騒音防止条例を順守しているカラオケボックス店であれば、防音性が高い設計になっているため、楽器の練習場所として適しています。都市部であれば店舗数も多いので、多くの場合予約なしで利用できるでしょう。
個人の演奏だけでなく、バンド仲間との音合わせの場所としても使えます。食事のデリバリーサービスをしている店舗も多く、長時間利用する際も便利です。
しかし、カラオケ装置を使って歌うという行為以外は禁じている店もあるので、あらかじめ規約を確認することが大切です。また楽器を使うことを前提に作られているわけではなく、音響面についてはある程度の妥協が求められます。あまりに大きな音を出すと他の客から苦情が店に寄せられ、練習を中止させられることもあるため音量を絞る配慮も必要です。
マイカーを持っているのであれば、使わない手はありません。乗用車は外部の騒音を防ぐ機能と併せて、内部の音が外に漏れるのをある程度防ぐ防音機能も備えています。当然ながら移動できるので、郊外や山奥など周囲に迷惑を及ぼさないような場所を選んで練習できます。ただセダンやスポーツ車の場合は内部空間が狭いため、楽器をハンドルや内装面にぶつけて傷つけてしまわないよう注意しましょう。
周囲に住宅がないビーチや、河原の土手なども人に迷惑をかけず楽器を演奏できるのでリーズナブルな練習場所になります。音を遠くまで響かせる感覚をつかめる、という点でも練習の効果が期待できます。注意点として、木管楽器は湿気に弱く、金管楽器は海岸の潮風が大敵になるため気をつけましょう。夏は熱中症の心配、冬はかじかんで指がうまく動かせないというデメリットもあります。トイレが近くにないケースに備えて練習する前に用を足しておくことも重要です。
ある程度お金に余裕があるなら音楽スタジオを使うのがおすすめです。カラオケ店のような大きな看板を出していないためあまり目立ちませんが、都市部には大小さまざまなレンタル方式の音楽スタジオがあります。料金体系は、月額方式の場合や時間制などさまざまです。
高性能のマイクやアンプなどの音響設備だけでなく、楽器そのものを備えている場合もあるので、仕事帰りに手ぶらで寄るという使い方も可能です。演奏や歌唱練習用の専門スタジオでは、音響のクオリティーがおおむね高くなっています。ただし利便性が高い分競争も激しく、利用したい時間帯を確保できない可能性があります。
地方自治体や第三セクターが運営する公民館や文化会館といった公共施設には、音楽スタジオやホールを備え、施設の貸出制度を実施しているところがあります。利用の際は、その自治体の住民であることを証明することが求められるケースも見受けられるので、準備物を確認しておきましょう。
午前、午後、夜間といった時間枠の利用体系である場合が多く、練習場所として適しています。音響設備もある程度整っているため便利ですが、アクセスしづらい立地の場合もあるので、移動手段についてもよく検討しておきましょう。楽器専門店の中には練習スタジオを備えているところもあります。
専門店の運営なので音響面での充実度は高く、アンプなど周辺機材もそろっており利用しやすい環境です。音楽教室によっては、レッスンの空き時間にレッスン室をレンタルしているため、そうした設備やシステムを備えている音楽教室を選んで通うというのも合理的な考え方です。
当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」