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フルートは、3オクターブという幅広い音域を出すことができる楽器です。C管(ツェーかん)であれば、ト音記号の譜面の五線譜の下に一本線を引いたドから3オクターブ上のド、五線譜をはるかに飛び出して線を5本書き足したところのドまでで出ます。
フルートの歴史はとても古く、起源をさかのぼれば5世紀ごろの横笛が原型です。現在のフルートのかたちになったのは、19世紀、テオバルト・ベームの改良によって現在のかたちになり、そのときからDまでしか出なかった最低音がCまで出るようになったのです。それ以来現在までほとんど形を変えていません。普通のフルートの最低音はCですが、もう1音下の音を出すこともできます。H足部管という部分があり、H管(ハーかん)と呼ぶこともありますが、H管なら最低音がドイツ音でH(ハー)の音、つまりシの音まで出せるようになります。
B♭管やA管、F管、Es管という言葉を聞いたことがありませんか?クラリネットやサックス、トランペット、ホルンなどはこういった呼び方をしますが、この場合はその楽器のもつ「調性」を指しているので、譜面上で記載されるドの音が、実音のドではなく、B♭(シ♭)であったりA(ラ)、F(ファ)、Es(ミ♭)であったりします。同じ指使いでも、管によって出る音が違ってくるのですが、フルートにおけるH管の場合は、最低音がシになるというだけで、指使いで出る音が変わるわけではありません。
H管は、高音域の音を出すときに、落ち着いた深い音になり、音程が上がりすぎるのを避けて安定させたいときに適しているのです。オーケストラなどで1stを吹く人は高音を担当することが多いので、H管を好む人も多いようです。たとえば、ピッコロはフルートよりも音程を取るのが難しい楽器ですが、それは管が短いせいなのです。C管しか持っていない人は、H足部管の代わりに厚紙を代用すれば、H管の音色を聴いてみることができます。厚紙を丸めて3.5cm程度長くなるように、足部管に差し込んでみましょう。ドの運指でシの音が出るようになるはずです。そのまま高い音域を吹いてみてください。H管の音を感じられるでしょう。
C管とH管のどちらがおすすめかということではありません。曲の雰囲気や出したい音色によって、より向いているケースがあるだけで、あとは個人の好みで選べばいいので、メーカーや価格以外の選択肢の幅として参考にしてくださいね。
当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」